こんにちは、sawaharuです。
前回は、看護研究における研究課題の見つけ方について”研究課題の決め方:6ステップ【看護研究】”と題して紹介しました。
合わせてこちらの記事もご覧ください。
その中で、文献検索ツールについてご紹介を省かせていただいたので、今回はその内容について、簡単ではありますが、文献検索の際に使用する文献データベースの一部を紹介させていただきます。
これから論文や文献を探そうという方は是非参考にしていただければと思います。
前提として、文献データベースは基本的に所属大学が契約していることで、すべての機能を使えるといった場合が多く、個人で使用するには制限がかかるもしくはそもそもログインができないデータベースもあります。
その点について、本記事では次のような感じで示しております。
[制限]:所属大学から付与されたIDやパスワードを用いてログインすることが必要なデータベース
[一部制限]:インターネット環境があれば、検索が自由に行え、一部本文の取得も可能であるデータベース
また、対応言語についても以下のように記載しています。
[英語]:英語のみに対応
[日本語]:日本語のみに対応
[英語・日本語]:英語と日本語の両方に対応
※一概に英語だけ、日本語だけしか検索できないということではありません。主な対象という意味合いです。
文献検索の際に使用する文献データベース11選【看護研究】
・CiNii Articles [一部制限・日本語]
・PubMed [一部制限・英語]
・MEDLINE [制限・英語]
・Web of Science [制限・英語]
・CINAHL [制限・英語]
・Google Scholar [一部制限:英語・日本語]
・J-STAGE [一部制限:日本語]
・メディカルオンライン [制限:日本語]
・Cochrane Library [一部制限:英語]
・国立国会図書館サーチ [一部制限:日本語]
基本的に最初は上から3つのデータベースで検索する形で良いと思います。
以下、一つ一つご紹介したいと思います。
医中誌Web
「医中誌Web(いちゅうし・うぇぶ)」とは、特定非営利活動法人 医学中央雑誌刊行会(略称:医中誌)が作成・運営する、国内医学論文情報のインターネット検索サービスです。国内発行の、医学・歯学・薬学・看護学及び関連分野の定期刊行物、のべ約7,500誌から収録した約1,400万件の論文情報を検索することができます。
出典元:医学中央雑誌刊行会. 医中誌Webとは. https://www.jamas.or.jp/service/ichu/ (閲覧日:2020/11/4)
医中誌は日本の論文を探す場合は第一選択として使用されることの多い文献検索データベースです。
大学に所属している場合は、大学が必ずと言っていいほど契約しているので、図書館サイトにログインすることで使えるかと思います。
大学病院で勤務されている方も、大学の図書館を利用する権利があることが一般的ですので、同じく使用可能かと思います。
その他の方は、医中誌パーソナルWebなどを使用する形となりますが、有料となってしまいます。月8時間コースが2000円(税別)、月20時間コースが4000円(税別)のようです。
なかなか高いですね。
デモ版というものもあるようですので、まずは試してみてから検討するというのでも良いかもしれません。
CiNii Articles
CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ])は、論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報で検索できるデータベース・サービスです。
CiNii Articles – 日本の論文をさがす は、学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記事索引データベースなど、学術論文情報を検索の対象とする論文データベース・サービスです。
利用登録なしにどなたでも検索できます。出典元:CiNii. CiNiiについて. https://support.nii.ac.jp/ja/cinii/cinii_outline. (閲覧日:2020/11/4)
CiNiiは医中誌同様に、日本語文献を調べる際に適していると感じます。
上記の通り、こちらは誰でも検索は可能です。
どんな論文があるのかということは調べられます。
本文のリンクがある場合は、そのまま読むことができますが、大学が雑誌と契約している場合にしか本文が読めないことが多いです。
そのため、個人で論文を収集するには限界があると言えます。
PubMed
米国国立生物工学情報センター(NCBI)が無料公開している医学関係文献の
データベースとなっています。MEDLINEに収録されているものは基本的に全文献検索することが可能となっています。
こちらは、英語文献を検索する際の第一選択データベースと思っていただいて問題ありません。
PubMedはCiNiiと同じような感じで、登録などなく検索を自由に行うことができます。
全文公開のリンクがある場合は、本文を読むことが可能です。
その他、大学が契約している雑誌の場合はその文献の本文も読むことができるという感じです。
MEDLINE
National Library of Medicine(NLM:国立医学図書館)製作による医学の基本的データベースです。5,600 誌以上の医学系雑誌のインデックス・抄録情報を提供。
出典元:EBSCO Health. MEDLINEシリーズ総合操作マニュアル. http://www.ebsco.co.jp/materials/manual/MEDLINE_searchguide.pdf (閲覧日:2020/11/4)
上記のPubMedと合わせて使用することが多い、医学系論文を網羅的に扱っている文献データベースです。
PubMedやMEDLINEのカバー範囲は違いがある点もあるようなので、システマティックレビューなどしっかりと文献レビューを行う際は、複数の文献データベースで検索を行う必要があります。
Web of Science
Web of Science のプラットフォームでは、インパクトファクターが付与されている厳選されたジャーナルの集合から、各地域・分野で注目されている幅広い国際的レベルの研究文献まで、計33,000以上ものジャーナル、特許データ、研究データセットに自由にアクセスすることができます。それらの信頼できる膨大な情報源から、信頼できる質の高いメタデータと引用の関連性 により、独自の新しい情報を発見できます。
出典元:Clarivate. Web of Science. https://clarivate.jp/products/web-of-science/ (閲覧日:2020/11/4)
インパクトファクターは、論文が掲載されている雑誌の質のようなイメージで用いられることが多いです。数値が高いほど、レベルが高いといったような感じです。
実際は、雑誌に掲載されている論文が世の中の学術論文に平均何回引用されているかを計算しているもので、数値が大きいほど、より多くの論文で引用されている雑誌ということがわかります。
このインパクトファクターという数値が計算されているということは、雑誌の出版に関する質の基準をクリアしているということも意味するので、Web of Scienceはある程度の質が担保されている雑誌やその論文を収集しており、検索できるデータベースとなっています。
医中誌Webなどと同じく、大学が契約する必要がありますので、個人がそのまま使用できるものではありません。
CINAHL
CINAHL(正式名称:Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature)シリーズは、EBSCO 社傘下のCINAHL Information Systems が制作した、看護学の基本的データベースです。
The National League for Nursing(全米看護連盟)、およびAmerican Nurses’Association(米国看護協会)が発行している全ての看護系雑誌と出版物を収録し、ヘルスケア関連の書籍・看護系学位論文・会議録・看護基礎実践本・教育用ソフトやビデオの情報なども同時に収録しています。
主な収録データの分野は、看護学、生体臨床医学、健康科学、代替医学、消費者健康など、関連する17 の分野と幅広く、看護に必須の情報をカバーしています。出典元:EBSCOhost. CINAHLシリーズ総合操作マニュアル. http://www.ebsco.co.jp/materials/manual/CINAHLseries_searchguide.pdf (閲覧日:2020/11/4)
CINALは様々なバージョンがリリースされていますが、大学等で検索できる一般的なCINALについても上記のような説明で問題ないかと思います。
CINALは看護分野に特化している、広くカバーしているデータベースであり、海外の看護文献を調べたいというときには積極的に活用した方が良いと思われます。
Google Scholar
さまざまな学術文献を検索することができます。分野や出典は様々で、論文や書籍、要約、資料、記事などが検索できます。
上記にあげたものと比較すると、検索語を細かく設定しにくかったりとより高度な検索はしにくい印象がありますが、Googleで普段検索するような感覚で検索できるので、とても簡単で便利ですので試してみてはいかがでしょうか。
日本語にも英語にも対応しています。
J-STAGE
J-STAGEとは?
「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)は、国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が運営する電子ジャーナルプラットフォームです。J-STAGEは、日本から発表される科学技術(人文科学・社会科学を含む)情報の迅速な流通と国際情報発信力の強化、オープンアクセスの推進を目指し、学協会や研究機関等における科学技術刊行物の発行を支援しています。
現在J-STAGEでは、国内の1,500を超える発行機関が、3,000誌以上のジャーナルや会議録等の刊行物を、低コストかつスピーディーに公開しています。J-STAGEで公開されている記事のほとんど*は、PCやタブレット、スマートフォンを利用して、世界中から誰もが閲覧できます。無料のアカウントサービス「My J-STAGE」に登録すると、よく使う検索条件を保存したり、お気に入りの資料について最新号発行の通知を受け取ったりすることができます。
*認証付き記事(各発行機関から許可を受けたユーザーのみが閲覧できる記事)を除く出典元:J-STAGE. J-STAGEの概要. https://www.jstage.jst.go.jp/static/pages/JstageOverview/-char/ja (閲覧日:2020/11/4)
日本語の論文が収集されているデータベースです。
医中誌Webで検索したあとに、J-STAGEのリンクに飛んで、そこから文献をダウンロードするという流れを良く見かけます。
本文が掲載されていることが多いですが、ダウンロードできるものは限られており、大学などが契約している場合しかダウンロードできない論文も多々収録されています。
直接J-STAGEから検索も可能ですので、検索しお目当ての論文があるか探してみてもよいかと思います。
メディカルオンライン
メディカルオンラインは、医療関係者のための医療情報の総合Webサイトです。
医師、看護師、医療技術者の方を始め、大学、病院、関連企業・団体などの多くの方々のお役に立てることを願って、2000年12月からサービスを開始しております。(原則として一般の方は登録致しませんのでご了承下さい。)日本国内の学会・出版社発行の雑誌に掲載された医学、歯学、薬学、看護学、医療技術、栄養学、衛生・保健などのあらゆる医学関連分野の「医学文献」から検索し、必要な文献はその場で全文閲覧・ダウンロードが可能です。(有料)
配信する文献は全て「著作権許諾」手続を済ませています。
当サービスをご利用いただくには、会員登録が必要です。出典元:メディカルオンライン. メディカルオンラインとは. http://www.medicalonline.jp/other/guide/#intro (閲覧日:2020/11/4)
大学等の研究機関が法人契約している場合は、所属の方はログインすることで使えます。
個人会員システムもあります。利用者は医療従事者など関係者である必要があり、一般の方は登録できないようです。
会員登録は無料と有料の両方のプランがあり、抄録や本文を閲覧する場合には1本ごとに料金を支払ってダウンロードするといったシステムとなっています。
Cochrane Library
Cochrane Libraryは、Cochrane共同計画が発行する複数のデータベースから成り、EBMの実践において、非常に有用なツールであると言われています。
Cochrane共同計画(The Cochran Collaboration)は、1992年にイギリスの国民保健サービス(National Health Service: NHS)の一環として始まり、現在、世界的に急速に展開している治療、予防に関する医療テクノロジーアセスメントのプロジェクトである。無作為化比較試験(randomized controlled trial: RCT)を中心に、世界中のclinical trialのシステマティック・レビュー(systematic review を、 収集し、質評価を行い、統計学的に統合する)を行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者に届け、合理的な意思決定に供することを目的としており、Evidence-based medicine (EBM)の情報インフラとも呼ばれています。
出典元:Cochrane Library. Cochrane Libraryとは. http://www.kms.ac.jp/~libin/kensaku/cochrane/cl_gaiyo.htm (閲覧日:2020/11/4)
上記の説明ではよくわからない単語が並んでいるかもしれませんが、
コクランは、質の高い文献レビューがまとめられたようなデータベースであり、その他RCTなどのエビデンスレベルが高いといわれる論文を広く収集しています。
自分の興味のある研究で質が高いと言われるレベルの研究ではどのような研究が行われているのか気になる際などは検索してみるのも良いかもしれません。
国立国会図書館オンライン・国立国会図書館サーチ
国立国会図書館オンラインは当館の所蔵資料または当館で利用可能なデジタルコンテンツを検索するため、国立国会図書館所蔵資料の検索や遠隔複写等の申込みに便利です。それに対し、国立国会図書館サーチは、全国の公共・大学・専門図書館、公文書館、美術館や学術研究機関など様々な機関の所蔵資料を統合的に検索します。
出典元:国立国会図書館. よくあるご質問. https://www.ndl.go.jp/jp/help/databases.html#:~:text (閲覧日:2020/11/4)
国立国会図書館のデータベースはどこの大学や組織にどんな文献や論文が置いてあるのかなどをまとめて管理しています。そのため、図書館に出向いて資料を複写させてもらうことなどが可能ですし、オンラインで複写依頼をすることで、有料であることが大半ですが、自分の読みたい論文や資料を取得することができます。
複写資料などは、自宅に郵送してもらうことも可能なようですので、大学等に所属していないというときも活用できそうですね。
コロナで大学に行けないというときに使っている人もいました。
まとめ
今回は、文献検索の際に使用する文献データベース11選と題して、とても簡単ではありますが、それぞれのデータベースについてまとめました。
11のデータベースとしては以下がありました。
・CiNii Articles [一部制限・日本語]
・Pubmed [一部制限・英語]
・MEDLINE [制限・英語]
・Web of Science [制限・英語]
・CINAHL [制限・英語]
・Google Scholar [一部制限:英語・日本語]
・J-STAGE [一部制限:日本語]
・メディカルオンライン [制限:日本語]
・Cochrane Library [一部制限:英語]
・国立国会図書館サーチ [一部制限:日本語]
文献データベースはあくまで論文や文献をみつけるためのツールですので、自分にとって重要な論文に行きつければどの道から行っても問題ありません。
自分に合ったもの、自分が使えるものを使っていくというスタンスでまずは良いかと思います。
大学に所属していないし、所属組織が特に文献データベースの契約をしていないから論文が探せないという方もいるかと思います。
最初は難しく考えすぎずに、インターネットで「気になる言葉+論文」などと検索してみるのも良いと思います。
その後、紹介した中の[一部制限]のデータベースから検索して、大学の図書館などに行ってみると良いと思います。
外部の方でも利用できる図書館などがありますので、調べると出てくるかと思います。
リサーチしてみると良いかもしれません。
また、論文は有料であったり、手に入れるのが面倒だったりすることが多いと感じます。
複写依頼なども時間がかかることがありますし、直接データで欲しいという場合もあるかと思います。
最近は、オープンアクセスという動きが積極的になりつつあります。論文を登録者や有料で提供するのではなく、なるべく誰でも無料で簡単に入手できるようにという動きです。
この動きが進むことで、より多くの人が論文にアクセスしやすい世の中になり、臨床で役立つことに繋がると信じています。
今回ご紹介した内容は私の調べた範囲や経験に基づくものですので、不十分な点も多いかと思います。
困った際は、公開されているマニュアルを見てみたり、図書館の司書さんに相談してみたり、勉強会に参加してみたりするなど情報を手に入れるように工夫すると解決の糸口がみえるかもしれません。
皆さんが研究を進める際や臨床での疑問について調べる際に少しでも参考になればと思います。
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